在職老齢年金

在職老齢年金は、就労し一定以上の賃金を得ている60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象に、老齢厚生年金の一部または全部の支給を停止する仕組みです。この制度は、高齢者の就労と年金受給のバランスを調整することを目的としています。

制度の歴史と変遷

在職老齢年金制度は1965年に導入され、その後数回の改正を経て現在の形になりました

  • 1965年:65歳以上の在職者に対して年金額の8割を支給する制度として創設
  • 1969年:65歳未満の人にも適用を拡大
  • 1994年:60歳台前半の制度を改正し、賃金増加に応じて年金と賃金の合計額が緩やかに増加するよう調整

現行制度の概要

現在の在職老齢年金制度は、以下の2種類に分かれています

  1. 60歳台前半の低所得者在職老齢年金(低在老)
    • 基本的には就労期間であるが、低賃金の在職者の生活を保障するために設けられた制度
    • 厚生年金の支給開始年齢の引き上げ完了後(男性2025年度、女性2030年度)に終了予定
  2. 65歳以上の高年齢者在職老齢年金(高在老)
    • 働いても不利にならないようにする一方で、現役世代とのバランスを考慮
    • 一定以上の賃金を得ている人については年金給付を一部調整

支給停止の仕組み

65歳以上の高在老の場合、以下のように支給停止が行われます

  • 賃金(ボーナス含む)と年金(基礎年金を除く報酬比例部分)の合計月額が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止
  • 2022年度の基準額は47万円
  • 2024年度からは基準額が50万円に引き上げられる予定

制度の課題

在職老齢年金制度には以下のような課題が指摘されています

  1. 「エイジレスに働ける社会」という政策目標との矛盾
  2. 高齢期の多様な働き方や生き方を抑圧する可能性
  3. 就労意欲の阻害

これらの課題を踏まえ、今後の高齢社会に適した制度の在り方について、継続的な検討が必要とされています。

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